(セブンの)ピザまんを初めて食べた
美味すぎた。
生まれて一度もピザまんもとい肉まんをほとんど口にしてなかった人間だったが、食わず嫌いという今までの愚行を悔みまくった。
嫌ってた理由としては「皮の部分の食感があまり好きではない」ことだったが、実際食べてみたら一切そんなことはなかった。
まず最初の一口が鮮烈だった。厚みのある皮を食い破った瞬間に感じる『熱』。それと同時に、100%濃縮還元ピザ要素の味が味覚を襲う。それが皮と合わさることで、口の中がピザになり、本物のピザを食べていると脳が錯覚を起こす。
未だ処理が追いついてない頭を働かせ、皮を噛みちぎろうとする。すると、口から何かが伸びているのを視認する。そう、チーズだ。
このチーズがたまらない。口からピザまんを引き離そうとする俺を引き止めるように、長く、強く、伸びている。
お前……そんなに俺の事が……
チーズの熱い想いに心が揺らぐ。今にも千切れそうな身体だったが、絶対に離れたくないという意思がひしひしと伝わってきた。
ピザまんを食べるためには、チーズを犠牲にしないといけない。自分自身の歯で彼女の身体を噛みちぎるのだ。そんな残虐なことが俺に出来るのか……?
どちらを選ぶべきなのか。思考は加速する。ピザまん、チーズ、129円、チーズ、おいしい、うまい、ピザ……
「ガッ!!!」
突然、歯が合わさる音がした。
瞬間、目の前にあった光景に驚愕した。
ピザまんが、無い……
闇夜の中、男は絶望した。北風が男の身体を冷やす。ピザまんを、チーズを、全てを失った男に残っていた物は、身体の奥底に眠る『あたたかさ』だけだった……。